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第2章 河西回廊

 

1. 河西回廊

河西とは、甘粛省の蘭州を流れる黄河の西を指し、蘭州からタクラマカン砂漠の入り口玉門関、陽関辺りまでをいう。長さはおよそ1,000kmで、 連山脈とゴビ砂漠に挟まれた幅40〜100kmの帯状の地帯であるので、ここを河西回廊と称している。

歴史的文献によると、紀元前2世紀に漢武帝は張蕎を使節として2度にわたり西域に派遣し、中国内地から中央アジアに抜ける路を開いた。これがシルクロードである。シルクロードは長安から黄河を渡り、河西回廊を通って敦煌に至り、敦煌から分かれて、一つは天山北路といわれる道で、天山111脈の北側を通り、哈密(ハミ)、吐魯番(トルファン)、烏魯木斉(ウルムチ)、伊寧(クルジャ)を経由してカザフスタンのアルマトイに抜けている。もう一方は天山山脈の南を通る天山南路で、犬山南路もまた2つに分かれ、一方を大山北道といい、楼蘭、庫爾勒(コルラ)、庫車(クチャ)から喀什(カシュガル)に到達する道で、もう一方の天山南道は尼雅(ニヤ)、和田(ホータン)莎車(ヤルカンド)を通り喀什で天山北道と合流する。更に西にはローマ帝国と結ばれている。
この地帯は年間降雨量が僅か40?という乾燥地帯である。 連山脈の雪解け水が大地に恵みを与え、オアシスを形成している。そこに、武威、張挾、酒泉、敦煌の町が誕生した。東西交易の要衝にあたるために、遊牧民族と農耕民族との争いが絶え間なく繰り広げられた地域である。
また、仏教伝来の道でもあった。

 

2. 甘粛省の一般概要

甘粛省は中国の中央部から西北に伸びる細長い省で、面積は45.40万km2(日本の約1.2倍)である。東西の長さは1,655km、南北は長いところで530km、短いところは僅かに35kmである。人口は1994年末では2,378万人(前年比101.4%)で、年平均1.55%(1980〜94)増加している。平均気温は0〜15℃で平均降雨量は300〜500?である。
経済的には、1人あたりのGDPは中国の全省・区の中でも最も低い省のひとつであり、1994年度は1,899元(227ドル)で全国平均の3,679元(441ドル)の約半分で貴州省の次に低い。伸展率も7.75%と平均の8.56%を下回り、格差が拡大する傾向にある。特に農民の所得か低い(全国最下位)。
甘粛省には民用空港が蘭州、敦煌および嘉崎関の3カ所ある。鉄道は蘭州を中心に全国に毎日50往復でているが、しかし国内客で満席の状態で外国人観光客が鉄道を利用することは難しい。道路は、主な観光地へは2級公路でカバーされており便利である。全体に近年インフラの整備はかなり進んできている。
甘粛省には多民族が住んでおり、漢族、回教族、蒙古族・チベット族等45民族に分かれている。
教育面では、非識字率(文盲・半文盲)か高く、約40%(女性は約60%)となっている。甘粛省全体で、小学校は3,382校67万人、中学校は688校37万人、高等学校は17校約4万人である(いずれも1993年の統計)。敦煌では、小学校が84校1.1万人、中学校が13校6.5千人で、高等学校は、1995年10月現在で2校である。

 

 

 

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